輪島塗

輪島塗

輪島塗は厚手の木地に生漆と米糊を混ぜたもので布を貼って補強し、生漆と米糊、そして焼成珪藻土を混ぜた下地を何層にも厚く施した「丈夫さ」に重きをおいて作られている漆器である。

<伝統的な技術または技法>

  • 下地塗りは、次の技術または技法によること
  • 木地に生漆を塗付した後「着せもの漆」を塗付した麻または寒冷紗を用いて「布着せ」をすること。
  • 生漆に米のり及び「輪島地の粉」を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを繰り返すこと。
  • 上塗りは、精製漆を用いて「花塗」または「ろいろ塗」をすること。
  • 加飾をする場合は、沈金または蒔絵によること。
  • 木地造りは、次のいずれかによること。
  • 挽き物にあっては、ろくろ台及びろくろかんなを用いて形成すること。
  • 板物または曲げ物にあっては、「こくそ漆」を用いて成形すること。
  • 伝統的に使用されてきた原材料
  • 漆は天然漆とすること。
  • 木地は、ヒバ ケヤキ カツラ もしくはホオノキ、またはこれらと同等の材質を有する用材とすること。
これらはあくまで伝統産業の振興を目的とする法令「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づく伝統的工芸品としての輪島塗の要件である。これらを満たすことで類似品と区別するための「伝統証紙」が使用できたりするが、これら要件をすべて満たしたものだけが輪島産の漆器であるわけではない。

「布着せ」は、木地に布を貼ることで、これは椀の縁や高台、箱ものの角など傷つきやすい所を補強するために施すものである。漆工芸における基本的な工程であるが、現在広く流通している漆器では省略されることが多く、輪島塗や越前塗、京漆器等の一部の漆器産地でつくられる物にしか見受けられない。

また、漆にフィラーを配合して作ったペースト状の下地材を何層にもわたってヘラ木で塗装していく工程を「本堅地(ほんかたじ)」といい、これも漆工芸における基本的な工程である。輪島塗ではこのフィラーに「輪島地の粉」と呼ばれる焼成珪藻土を用いるのが特徴である。 本堅地の工程では、最初は漆に数百μmの粒径のフィラーを添加し、工程を進めるごとに何段階かにわたってフィラーのサイズを細かくしていき、最終的には数十μmの粒径の物を使って仕上げる。 表面に見える赤や黒の漆はこの後に刷毛で塗装されている。

なお、通常漆工芸では桧のヘラを使って下地作業を行うが輪島のある能登地方には桧が分布していないため、代用材として同じヒノキ科のヒバ(ヒノキアスナロ)をヘラ木として用い、特に能登地方ではヒバを「アテ」と呼称していた。 能登アテは青森ヒバから分根したものであるが、現在では材木としてブランド力のある青森ヒバにならって「能登ヒバ」として市場に出ることが多くなった。 ヒバ材は桧よりも許容応力度が劣るものの、ほぼ同様の性質を持ち輪島地の粉を使った下地作業には最適とされている。